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『中国古典読法通論 』の「品詞の活用」論

『標準漢文法』四百三十一項に「名詞性動詞」(変態動詞の一種)の種類を六つに分かちて論じてあります。今説明に便利なようにすべてに以下のような名称を附しておきましょう。

一、自動の生産性動詞的用法(~たり)
二、他動の客観的生産性動詞的用法(~にす)
三、他動の思念的生産性動詞的用法(~とす)
四、進行的用法
五、存在的用法
六、運用的用法

()内は通俗的訓読の仕方です。「宗周」は(三)の用法でして、「周を宗とす」と読みます。「臣妾我」は(二)の用法でして、「我を臣妾にす」と読みます。文法的にはどちらも「~とす」と読むべきものでありますが、「客観的」と「思念的」とを区別するために読み分けておるのみです。


『中国古典読法通論 』百四十項に「名詞の状語用法」なる題目ありまして、その内の(第一)(第二)の用法は上記の(一)「自動の生産性動詞的用法」と(三)他動の思念的生産性動詞的用法とによく対応しております。

(第一)の例として以下のようなものを挙げておられます。

而啼 (左傳莊公)
天下集而響應 (過秦論)

この「人」や「雲」を松下文法に則って読み下せば、「人とありて」「雲とありて」であります。実際に豕が人としてあって立つことはありませんから、解釈としては「人のごとく」などとすることになります。しかし、理論上は「人」は生産性なる運用を内部に帯び、「人」という名詞性なる実体を生産性に対する客語としておるのです。内部において客体関係でも外部において一詞でありますから、文法的直訳をすれば「人たりて」であります。(二性能(この場合は動詞的性能と名詞的性能)が一性能化(この場合は動詞化)しておるから正態詞に対して変態詞というのです。)

(第二)の例としては以下のようなものを挙げておられます。

今而後知君以犬馬伋 (孟子萬章下)
君為我呼入、吾得事之 (史記項羽本纪)

孟子のほうの例は松下博士も採用されております(四百三十八項)。「犬馬畜伋」は「犬馬と看做して伋を畜ふ」のです。これを「犬馬もてやしなう」と読めば「犬馬」を名詞の修用格的用法と為して解釈したことになります。王力氏はそのような用法を「名詞の状語用法」の第三として分類してありますが、松下文法ではそれらは名詞の修用格的用法として分類してあります。要するに変態動詞ではなく、名詞の格としての運用であるというのです。

松下博士が「(二)他動の客観的生産性動詞的用法」として分類したものは、王力氏の文法書のどこに分類されておるかと言えば「名詞の使動用法」(百三十八項)にあります。松下博士のいう「客観的」とは要しますにあるものを実際に他の状態にしてしまうことを言います。これは云ってみれば、「あるものをして他の状態たらしめる」ことでありますから王力氏は使動用法に分類したのです。松下博士がこの(二)の用法を書き換えて「使~為~(~をして~たらしむ)」と出来るとおっしゃっておるのとよく符合します。

「肉骨」を松下文法に則って読めば「骨を肉にす、または、肉たらしむ」であり、王力氏の理論によれば「骨をして肉たらしむ」となります。いづれにしても骨が実際に、すなわち客観的に、肉になるということです。無論、客観的か思念的かは文脈によって判断します。「生死」は死んでいる人を生きていると看做すの意味とすれば、「死するを生くとす(以死為生)」と訓み、既に死んでおるものを生き返らせるの意味とすれば、「死(的状態にある者を)を生(的状態)にす、または生たらしむ(使死為生)」とでも訓むことになります。前者は他動の思念的生産性動詞的用法で、後者は他動の客観的生産性動詞的用法です。「生」は動詞を材料にするものでありますから、名詞性動詞ではなく、動詞性再動詞であるという点だけはことなりますが、結局変態動詞であることに変わりはありません。



『中国古典読法通論 』(百三十四項)に曰く、
動詞の使動用法というのは、其の名称からすぐに分かるように、主語になっている人物が其の動作を行うのでなく、賓語になっている人や事物にその動作を行わせるものである。

下線は私が施したものです。この「主語」は使動の主体、「其の動作」とは松下文法に所謂「原動」にあたります。「賓語」は使動の客語、すなわち原動の主体です。例えば、

求也退、故之 (論語先進)
晉侯趙盾酒 (左傳宣公)

これら「進」「飲」は使動性の動詞です。「進」の原動の主体は「求」でありますが、ここでは使動の客体「之」になっており、使動の主体は「孔子」です。「孔子(使動の主体)が求(使動の客体、原動の主体)に『進む』(原動)という動作を『為さしむ』(使動)」ということです。孔子は「為さしむ」(使動)の主体で、求は其の客体です。一般的には「之を進む」と読み慣わしておりますが、文法的には「進ましむ」であります。





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