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自然的他動と其の漢訳との比較、また変態動詞の他動性用法の他動性の意義について

まず形容詞の自然的他動の例を挙げますと、
夜を寒み
名を惜しみ
月を清み
の類を指して言います。もしこれをそのまま客体関係として漢訳して、

寒夜

としたならば、どうでありましょう。寒き夜と訓めることは無論でありますが、またこれは「以夜為寒」の意となりまして、自然的ではなく明確に作用の主体を認めるところの意志的他動と言うことになります。松下文法に所謂名詞性動詞の他動性用法であります。然らば自然的他動をどう漢訳するかということになりますが、自然的他動と自動とは同義の関係にあるわけでありますから、単純に、

夜寒
でよい。「夜を寒み」は夜を寒く持って、の意で、自動にすれば「夜が寒くて」であります。

しかし漢文にも自然的他動を表す動詞はありまして
有、無、多、少、成、懸、富、下、聞、見、
などであります。「有」の意義を帯びれば皆自然的他動を表します。


士卒死傷 (自然的他動) ⇔ 士卒死傷多 (自動)

死傷」は自然的他動です。「死傷するを多み、死傷することを多的状態に持つ」であります。自動にすれば「死傷することが多くあって」であります。自動においては甲の動作であるものが、自然的他動においては乙の甲を客体とするところの他動になっております。甲の動作も乙の動作に同化せしめられておるのです。

自然的他動は他動の四つの意義、すなわち「処置、生産、保有、使用」のうちの「保有」の意義であります。


次に変態動詞の他動性用法の他動の意義についてでありますが、これは「処置」であります。

強國
これは「国を処置するに強的状態とするを以ってする」のです。保有である自然的他動の「下雨」が「雨を下的状態とありて持つ」となるのと比較すればよく其の観念の扱い方において類するところあるを発見しましょう。

犬馬畜伋
「伋を処置するに犬馬たる状態として畜ふを以ってする」のです。

劉豫我
「我を処置するに劉豫たる状態とするを以ってする」のです。

「三枝の中にを寝む」の「寝む」が「三枝の中にを」に対する関係と其の他動の形式的意義は同じです。保有は「有」の形式的意義を含み虚主的動作であるのに対し、処置は「為」の形式的意義を含み且つ意志的他動であります。

「寒夜」は「寒有」の意義(保有)にならず、「為寒」の意義(処置)になるのです。


【まとめ】

●もし形容詞の主語を妄りに客語の位置に配置すれば、処置的他動の意義となってしまう。(例)「重義」とすれば、「義を重しとす、重んず」の意になる。しかし「義を重み(す)」と訓めないわけではありません。解釈次第であります。

●一部の本動詞は自然的他動となる。その場合は皆「有」の意義を含む。(例)「懸明月」は明月を懸かっている状態に持つのであります。「富國」なれば、「国を富む状態に持つ」のであります。意志的他動ならば「国を処置するに富むを以ってする」の意です。解釈次第であります。



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