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漢文速成 三十三日間講座 (二)

前回は「語の研究」のうち、「単語」について簡単に述べました。単語とは漢字一字で或る全き概念を表すものでした。松下文法に所謂単辞の単詞です。それに対して今回お話致しますのは「熟語」についてであります。熟語とは漢字二字以上を連ねて或る全き概念を表すものです。松下文法に所謂連詞のようにも聞こえますが、そうではなくむしろ連辞の単詞というべきものであります。たとえば、「仁與義(仁と義と)」と言えば、これは連詞の名詞でありますが、「仁義」と言えば、これは連辞の単詞となります。ここで「熟語」といいますのは、この連辞の単詞の如きものを指して言っておるのです。無論、「仁者」のようなものは、連詞と看做すこともできますから、熟語という中には連詞も含まれることにはなります。



【語の研究】


「熟語の研究」

熟語を分かちて七類とします。すなわち、名詞、代名詞、形容詞、動詞、副詞、感嘆詞、三字以上の熟語の七つです。たとえば「我」と言えばこれは前回見ましたように単語の代名詞でありますが、「不肖」と言えば熟語の代名詞になるわけです。第七類の「三字以上の熟語」というのは随分大雑把な分類の仕方でありますが、もちろんこれにもそれぞれ品詞はあるわけでありますが、それについては第三回目の講座で述べます。


(赤字は松下文法との関係を補足したものです。読み飛ばして頂いても構いません。)


第一類 名詞

【ア】名詞+名詞
(い)意義相対する単語の名詞を連ねて二物を意味する者。たとえば、「父母」「日月」の如し。
(ろ)同義の名詞を連ねて一物を意味するもの。たとえば、「樹木」「禽獣」の如し。
(は)異義の名詞を連ねて或る一物を意味するもの。たとえば、「君子」「車馬」の如し。「車馬」は「車」に非ず、「馬」に非ずして、「馬車」の意。
(に)形容詞の如く名詞を用いて他の名詞に冠するもの。たとえば、「匠人」の如し。「匠」は大工で名詞でありますが、ここでは「人」に冠して一種の形容詞の如く用いておるのです。(註)「匠之人」と言えば連詞でありますが、「匠人」は連辞の単詞というべきでしょう。すなわち松下文法に於いては「匠人」は単詞である以上、連詞としてはもはや分解できないものとして考えます。


【イ】形容詞+名詞
(い)名詞に形容詞を冠したるもの。たとえば、「明月」の如し。「明」が形容詞。(註)「明」は動詞の連体格的用法。「月を明らかにす」と読めば、「明」を変態動詞として用いたものということになります。

【ウ】動詞+名詞
(い)名詞に動詞を冠したるもの。たとえば、「亡國」の如し。(註)松下文法にてもこの「亡」は動詞。格として連体格的用法。「亡」と「国」との関係を客体関係として、「国を亡ぼす」「国より亡(に)ぐ」と読むも可。前者は「亡」を他動性動詞とし、後者は依拠性動詞と看做したものです。
(ろ)意義無き「有」の字を冠する者。たとえば、「有虞」「有政」「有家」の如し。


【エ】形容詞+形容詞
(い)異義の形容詞を連ねたるもの。たとえば、「強弱」の如し。
(ろ)異義の形容詞を連ねるも、一方の意義が無いもの。たとえば、「緩急」「軽重」「多少」の如し。もちろん「緩急」が「緩と急と」を意味する場合もあり。(註)単念詞のこと。

【オ】形容詞+後置詞
(い)「仁者」など。(註)実質関係の連詞。実質語になるものには、名詞、動詞、副詞があります。「仁者」の「仁」は叙述態名詞の実質格的用法で従属部、単純形式名詞の「者」が統率部。「信我者」と言えば動詞(信我)が実質語で、「我を信ず、者」の意。「我を信ずる者」でないことに注意。すなわち連体語を受けるのでなく、不定法たる動詞を受けるのです。

【カ】副詞+形容詞
(い)「不祥」など。(註)修用関係の連詞。「不的にめでたし」と読めば直訳的。否定的にめでたいのです。

新楽先生曰く、

熟語にも転用することあり、右の内最後の四つは皆名詞に転用せるものなり

(註)「仁者」の「者」はもとより形式名詞でありますから、転用と云うには及びません。端から連詞的名詞です。その他については、転用はすべて詞の運用と考えてください。「不祥」も「不的にさいわいなり」の意とすれば動詞なるも、「不的にさいわいなるコト」の意と解すれば、動詞的名詞(変態名詞)となるなどの類です。



第二類 代名詞

(い)人を尊敬しては「夫子」「先生」、友人を親しみては「吾子」、国君には「陛下」「天子」と称します。
(ろ)自ら謙遜しては「小子」「不肖」「不佞」と称し、国君は「寡人」「不穀」「乃公」と称します。

(註)人称代名詞にどのようなものがあるか列挙しておきます。(『標準漢文法』九十六項参照)
第一人称 我、吾、余、予、僕、朕、台、寡人、不穀、弧、不肖、愚、小子、妾、臣、兒、鄙人
第二人称 汝、女、而、爾、乃、若、子、吾子、兄、公、卿、君、足下、先生、大人、閣下、殿下、陛下
第三人称 彼、渠、夫、他





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